26 神ない話

 野郎こべら、道の傍さ小便たれだり、川さしったところが、そこさ村の和尚さまが通りかがって、
「道や川さ、小便たれんな。川の下の方さ使い水しているなだから、決して小便などたれてわるい」
 と言うたと。野郎こべらは、
「ほんじゃ、どこさたれっこと」
 と、和尚さまさ聞いたところが、和尚さまは、
「川には川の神さま、山には山の神さま、道には道の神さま、田には田の神さまざァあっから、神さまのいないとこさ、たれろ」
 と、和尚さまが教えるもんだから、野郎こべらは、わらわらと木さ登って行って、和尚さまの頭さ、チイチイと小便たっだと。
 そしたれば、和尚さまは怒って(ごしゃえて)、
「こら、俺の頭さ、小便ひっかけるな、誰だ」
 と言うたところが、
「和尚さま、和尚さまはカミのないところさたれろと言うから、和尚さまの頭には、さっぱり髪がないから、たっだんだ」
 と言うたと。
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