24 大当り

 むかし、あるところに狩人がいたったと。一つ玉つめて、打越の沼さ行ったところが、鴨はずうっと二十羽も横に並んで、沼の上さ浮きったけと。一つ玉なもんだから、スポーンと打(ぶ)ったところが、二十羽の鴨ァ、ありったけ打ち通したと。
 ところが、それ玉は沼岸にあった大きな栗の木の木の下さいた熊は昼眠していたが、その熊の腹さ当ったと。そしたらば、熊は苦しまぎれに、栗の木をたずさえて、ゆさゆさ揺ったと。その栗の木の実は、今熟(う)んで落ちるばっかりだったほでに栗はボタボタ落ちたと。
 沼のあちこちさ浮いた鴨二十匹背負って、熊一匹とって、大栗三俵ばっかりほろってくれたのを拾って、それから見たれば、熊が切ないまぎれに後足でガリガリ根っこ齧ったもんだから、そこに生えた自然薯二十貫目ばっかり掘ったと。
 そして気付いて、衣裳が重たいと思って脱いでみたところが、股引の中さ、泥鰌が五六貫目入っていたと。帰りには背負って来らんねがったほどだったと。これぐらい大当りないもんだ。
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