22 どんずやりにゃ切りがない

 むかし、どんずやり(横着)いたったと。
 あんまり稼がねほで、家のオッカからヤキメシ一つ握ってもらって、そいつを背負せらっで、ぼだして(追払らわれる)やらっだと。
 そして行ったげんど、首からヤキメシとって食うのが大変なもんだから、腹ァ減っても取って食うの嫌で、かまわず歩いて行ったと。そしたらば笠かぶった男は口開いて来たったと。
「あのやつは、腹減って来たんだから、もし俺のヤキメシ、俺の首からとってもらって、半分呉れてやれば、半分は自分が食えっから…」
 と、あの野郎騙して首からヤキメシとってもらうべと思ったと。そして、
「俺の首にヤキメシあっから、取ったら半分お前さやっから…」
 と言うたら、
「いや、はっづけな(そんなつまらない)、人のことなどしてらんね。俺ァ笠の紐ゆるんで、仕様ないげんども、結ぶ(ゆわく)の嫌で、口開いてこうして来たんだ」
 と言うたと。
 どんずやりにゃ切りがないもんだと。とーびんと。
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