18 猫とお観音さま

 賢こい猫がいたったと。お観音さまに仕えていたったと。で、お観音さまは、
「お前は中々信仰家だ」
 と、うんと褒めたと。
「俺はお観音さまに褒められるくらいになったんだもの、お観音さま、何とか他人のオカタになってみたいから…」
 と言うたら、
「丁度、花嫁さんのように化けられっか」
 と言うたと。猫は立派に化けたと。そんで、
「お前に一言いわんなねのはこうだ。お前はそのぐらい人間に化けられるほどの能力のある猫だから、先ず今迄の性をすっかり断って、蛙やネズミば絶対にとんねようにさんなね」
「んでは、確かにとりません」
 お観音さまは、あるところさ仲人してくれて、立派な花嫁さんになって行ったと。そしてオサンコト(三三九度)の真っ最中に、大きなネズミが出はったと。そうすっど、今迄立派な衣裳しったの、衣裳からお化粧から、皆、化けがとれてしまって本当の猫になってしまったと。そしてちょいらネズミに噛みついたと。
 んだから、人の気性ざぁ、七十五才まで脱けないもんだけど。とーびんと。
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