7 蛇    聟

 むかし、村さ三人の娘もった親父あったと。田に水掛かんねくて困っていたら、蛇がやって来て、
「ほんじゃら、俺ァ水掛けて呉(け)っから、その代り娘の一人を嫁に呉(け)ろ。ええが?」
 親父ァ困って家さ帰って寝っだと。昼になって一番目の娘が、
「なして、飯(まま)食(か)ねのや?」
「こういう訳で、飯食うどこでない。お前、嫁に行って呉(け)っか」
 と言うたら、一番目の娘は、
「蛇のオカタなど、とんでもない」
 と答えたと。それから二番目の娘が来たので、また頼んでみたら、やっぱり一番目の娘と同じだったと。
 三番目の娘が来たので、親父は、
「お前に聞いて貰わねごんだら、俺ァ御飯(おまま)食(か)ね」
 と言って寝っだと。そしたら何日も食(か)ねで寝っだと。三番目の娘は孝行娘だったほでに、
「ほんじゃ、条件がある」
 と、「長持一つさ、ゴマヤキメシ千握って、そいつさ針三本ずつ入れて、もう一つの長持さ、フクベン千入っで呉(け)ろ」
 と言うたと。
「そいつを持って、打越の沼さ持って、俺どこ送って行って呉(け)ろ」
 と言うたと。そして蛇さ行き会ったもんだから、蛇はうれしくなって挨拶したと。娘は、
「そんではお前も腹減ってたべから、ヤキメシを皆食って…」
 と言うと、
「俺も娘としては村一番と言わっだんだから、お前だって技量はあんべと思うし、フクベン、俺が沼さ千浮かすから、ありだけ沈めてみせろ」
 と、蛇さ言ったと。そしたれば、針三本入ったヤキメシを食った体で、フクベンを沈めっど思ったので、フクベンはポコポコ浮きて、そっちすっどこっち浮き、こっちすっどそっち浮き、とうとう疲れ切って死んでしまったと。そうして、前千刈・後千刈の田ァ、みな三番目の娘がもらったと。とーびんと。
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