47 ピョンピョコの助

 奥州出羽の国生れのピョンピョコの助という人が、難波の国さ奉公に行った。ほして一生けんめいむしっていたれば、お姫さま出はってきて、
「こりゃ、ピョンピョコの助、休んだらあかんで」
 て言うど、
「おれぁ、休むて言うたわけであんまいし」
 いきなり休んで呉だ。ほしたらお姫さま、
「あら、ピョンピョコの助、休んだからには仕方おへん。わたしの傍になんか来ちゃ、あかへんで」
「おれは傍さ行ぐなて言うたわけであんまいし」
 いきなり傍さ行って()だ。
「あら、ピョンピョコの助、傍に来るなと()わはったに、来たから仕方おへん。座敷にお布団なんか敷いてはあかんで」
「おれは、お布団敷くなんて言うたわけであんまいし」
 いきなり布団敷いて()だ。
「あら、ピョンピョコの助、敷くなと言うたに、敷いたから仕方あらへん。うちの傍に来て寝ぁはってはあかんで」
「おれぁ、傍さ行って寝るなて言うたわけであんまいし」
 いきなり寝て()だ。
「あら、寝るなて言うたに、寝たからは仕方おまへん。うちのものとあんたはんのもの合せたりしてはいけまへんで」
「おれは合せるなて言うたわけであんまいし」
 いきなり合せて()だ。
「あら、ピョンピョコの助、合せてしもうたからには仕方おまへん。くいっと押したりしてはなりまへんで」
「おれは押す、なて言うたわけであんまいし」
 いきなり押して呉だ。ほうしたれば、
「あら、押しやんな押しやんなて言うたに、押しやったがらには仕方ありまへんで、こんどはなぁ、腰ペクペクさせてはいけまへんで」
「おれぁ、腰ペクペクさせるの何だのて言うたわけであんまいし…」
 今度は右さん、左さん、水車。右さ三べん、左さ三べん、あとはうなぎの背のぼり、ニョロリニョロリと、あとは落花の乱れつきと、こういう風にやった。ほうしたれば、お姫さま、
「しやんな、しやんなて言うこと、皆しやはってあかん子だね。この人は。だけどな、このことばっかりは誰にも言わしゃんすなよ」
「おれは人さ喋るなて言うたわけであんまいし」
 ほこらここらさ、お姫さまのこと、みな喋って()た。どんぴんからりん、すっからりん。
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