44 彦市ばなし― 狐と狸 ―

 その彦市が、きつねやたぬきと非常に仲よしだった。ある時、ちょぇっと彦市が田んぼさ行ってみたれば、砂利だ茶碗かけだ、瓦だて言うの、みな田さ()っでだ。はいつぁ、ほの狐やたぬきのいたずらだていうことをピーンときた。彦市が怒鳴った。
「いやいや、ええ肥料(こやし)してもらったもんだ。こりゃ、石ころも三年()つと小便たれるって言うし、瓦肥料に瀬戸かけ肥料、こだいええことない。今年は大豊作だ。こいつ、ほに、馬糞なの、人糞なの入れらっだんだら、ほれこそ田、だいなしだった」
 ほいつ狐聞いっだけぁ、むんつん野郎べらなもんだから、次の日、瀬戸かけや瓦かけ、すぱっと片付けて、馬の馬糞みな田さふっ散らかしったけ、ほして彦市にええあんばい狐たぬきだ、はからっだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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