31 猫の子は猫

 むかしあったんだど。
 あるどこさ猫の子生まっだんだど。ほうしたれば、猫の親、
「何て名前つけたらええがんべなぁ、とにかく世の中、荒くなくてはなんねぇから、一番荒い名前つけんなね」
「一番あらいて言うたら、何言うたて、お天道さまだべ、お天道さまて名付けたらなんだべ」
「いや、お天道さまなの駄目だ、雲がかかれば何も()ねぐなってしまう」
「雲と名付けっか」
「ほだな雲なの分かるもんでないっだ。風くっどすぐ吹っとばされる」
「んじゃ、風、お風とでも名付っか」
「風など、板塀あっど何にもならね、板塀のかげ、さっぱり風吹かね」
「板塀とでも名付っか、ほんじゃ」
「何、板塀なの大したことない。ねずみにかじられっど、何にもならね」
「んでは、ねずみと名付っか」
「ねずみなの、猫に食れっど何にもならね」
 て言うて、やっぱり猫の名前は猫だったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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