16 笠地蔵

 むかしとんとんあったずま。
 あるところに、じんつぁとばんちゃ二人いだんだけど。ほして焚物売ったり、柴売ったり、あるいは山菜・茸・雑魚なの、()めて売ったり、町さ背負ってくるじんつぁいだんだけど。
 ほして、そのじんつぁ、いつも背負って行く柴、みんなから人気ものなんだけど。「すずめ柴」て言うて、くべっどチュウチュウというから、「すずめ柴」ていうのだど。なしてチュウチュウて言うかていうど、他の人背負って行く柴は乾燥した柴で燃えっけんども、そのじんつぁん、なかなか生活楽でないもんだから、伐ってきた柴すぐ売らんなね。乾燥してねもんだから、チュウチュウて音する。んだげんど正直なじんつぁだし、なかなか年もとってるし、気の毒がって、柴よく買って()だもんだど。
 て、ある時、正月もそろそろ近づいたから、毎年買って呉た人さ配らんなねべて、正月のお雑煮用として取ってだ〈干しぜんまい〉背負って、そいつ売って正月する米・味噌・魚て買ってくるていう計画で行なった。ほしたらばその日は、何だか空模様悪れくて、みぞれ降ってきた。ほして村はずれまで行ってみたれば、村はずれの七地蔵て言うて、七人の地蔵さまが、そのみぞれに叩がっで、いかにも寒そうだっけ。
「ああ、地蔵さま、寒そうにしったごだ」
 と思ったげんども、銭一文もない。何とかまず、こいつ売ってと言うわけで、町さ山菜背負って行ったれば、いつもの通り買う人待ってで()ではぁ、みな買ってもらった。ところがはいつで正月のもの買ってくっどええがったげんど、地蔵さま寒いがんべて思って、クゴ蓑と菅笠と、おのおの七つ買ってきて、そして地蔵さまさかぶせて()だ。
「地蔵さま、地蔵さま、寒いがったべな、ほらこんどは大丈夫だ。ほら、こっちもどっこいしょ」
 て、七人の地蔵さまさ、みなかぶせて呉だ。ほして家さ来て、
「ばんちゃ、ばんちゃ、実はこういうわけで、銭、これだけもらったんだげんど、ほいつでクゴ蓑と菅笠と買ってきて、地蔵さまさかぶせて来たはぁ」
「ああ、じんつぁ、ええがった。何ほだえうまいもの食ねったて、正月なの来んのだから大丈夫。んでは今夜仕方ないから、クキナ漬でお湯でも飲んで寝んべはぁ」
 て、二人は菜漬け出して、お湯飲んではぁ、寝たんだどはぁ。ほうしたれば明け方になったれば、表、急にさわがしくなった。
「何だべ、何ごと始まったべ」
 したれば、こう言う声聞こえる。
「ほこらでないかい、じんつぁ、ばんちゃ」
「ここらな(はん)だ」
 なて言うけずぁ、表の戸ドンドン叩く音した。ドンドン叩く。
「はいはい」
 したれば、一等最初かぶせて呉た地蔵さま先頭になって来て、
「いやいや、じんつぁ、実はおらだ、村はずれの七地蔵だ」
 ほうしたけぁ、七人して米俵、ほれから鮭のよ、ほら着物だの何だのって、いっぱい車さつけて引張ってきた。ほして、
「こいつぁ、おらだからのささやかながら、じんつぁとばんちゃさの贈り物だ」
 ほしてドサッと、はいつ置いて行ったんだけどはぁ、クキナしか食わんねがったじんつぁとばんちゃ、急に地蔵さまから、いっぱいもらって、ほして楽々とそいつ御馳走なりながら暮したけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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