15 狐むかしむかしとんとんあったずま。あるとこへ、山菜とって町ちゃ売り行ったり、あるいは茸とって売りに行ったり、雑魚せめて売りに行ったり、ほして売ってきた銭で、ばんちゃと細々暮してるじんつぁいだんだけど。ほしてある時、年とりにもなったもんだから、山菜の干しった奴、ゼンマイとかコゴミ、そういう風な背負って、じんつぁ、また町さ売りに行った。 ほして、ええあんばいに売って戻ってきて、いつでも町はずれの酒屋さ寄って一杯ひっかけて元気つけて帰って来んのだけど。 ところがじんつぁ、山菜乾したな売って帰って来んべと思ったれば、きれいな女、「じんつぁん、じんつぁん」て言うた。「何だ」「おまえ、ほだえして大変だべがら、おれ、お前さ行って手伝うからて、おれば連 て言う女いだんだけど。 「ああ、ほうか」 じんつぁ、はいつ見っだれば、むらむらと女欲しくなったんだど。 「ほうか、んだらば、おれとお前連 て言うて、大きい箱背負って、昔はまゆ箱て言うて、もともとはお茶などつめてよこした奴を、蚕のまゆつめたもんだそうだ。はいつさいろいろなものつめて背負ってって売った。ほのまゆ箱の中さその若い姉ちゃんば入っで背負ってきた。ほして酒屋さきて一杯ひっかけて元気つけて行くべと思って、酒屋さ入った。何だかいつかと様子ちがう。ソワソワしてる。ほして、 「やぁ、親父さん、一杯たのむ」 て、いつもの通り濁酒ひっかけたところが、番頭だ、 「何だてあのおかしいな、普通とちがう、何背負ってきたんだべ、あのじんつぁ」 て言うわけで、そおっとその箱のふた開けて見たんだど。したれば、はいつの中から狐がピョーンととんで行ってしまったんだど。 「あややや、悪 て思って、番頭だ考えた。 「ああ、ええことある。仕方ない、はいっちゃ酒粕入っで置けはぁ」 て言うわけで、狐の重さぐらい、ちょうど四・五貫目ぐらいの酒粕箱の中さ入っだ。ほうしたれば、じんつぁ一杯飲んで機嫌ええぐなって、 「ああ、姉ちゃん、姉ちゃん、んじゃ、まず、おら家 て言うわけで、ニコニコて荷繩 「ばさま、んだから、皺くちゃばんば出はって行げ」 「何だべ、いつもこだごど何十年とつれ添ってだげんど、言 「やかましい、ヘラヘラ言うな。にさ(お前)なの、どこもかこも気に合わね、口などばりヘラヘラって」 「ほだごどないべした」 「出はって行げ、出はって行げ」 何 「ああ、姉ちゃん、うるさいばんば出はって行った。おれと二人して今日から暮すべ」 なて言うわけで、ほのふた、ちょえっと取って見たれば、姉ちゃんがいねくて、酒粕入ってだけど。したれば、じんつぁ、 「こりゃ、ばんちゃ追出して、おえない目に会った」 ほだい遠 「ばんちゃ、ばんちゃ、酒粕なめろ」 て言うて、そしてばんちゃは連 |
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