11 木の精のはなし

 むかしあるところに、おっつぁんとおかちゃんがいだんだけど。ほしておっつぁんが山さ焚物とりに行って、おかちゃんは百姓仕事したり、家の仕事したりしていたんだど。
 ある時、おっつぁんが山さ行ったらば、急に暗くなって、大粒の雨、どしゃぶりになってきた。何とも仕様ないから、木の洞の中さ隠っで、にわか雨しのいだんだど。
 ほだいしているうちに暗くなってしまったんだど。ほして何だか梢が鳴るような、おかしげな音するなぁ、と思っていたれば、木と木のすれ合いだべかなぁと思ったら、何だか話声きこえるんだけど。
「おお、みんな()えべ、みんな行くべ」
 て。何だべと思ったれば、
「今日はここの下の方の村さ、おぼこ生まれっから、そいつの産声、あが泣き聞きに行くべ」
 したれば、ほの洞穴の木の精が、
「ちょえっと、おれ、ここさお客さま来ったから、おれ行がんねがら、みんなして行って、聞いでけろ。ほしておれさ教えで行ってけろ」
 て。はいつ、峯の一本松さん、沢の朴の木さん、中のかえでさん、もみじさん、木の役員しった人ぁ、みな里前さ下って行って、その産声聞きに行ったんだど。ほして子ども生まっで、その産声の泣き様で、その人の寿命がわかるんだど。ほして、木の精だ、みんなして聞いっだれば、やっぱりおぼこ生まっで泣いた。ほうしたれば、
「その泣き方、よっく聞いっだら、七年しか生きらんね。ほっから先はどうもうまくない。困ったもんだな。何とかうまい方法ないべか」
 その木の精だ、みんな話ながら帰ってきた。ほして洞の一番大きい木の親方さ報告していった。
「実は、この下の里さ、おぼこ生まっで、あが泣きをみんなして聞いっだれば、何だて七年しか生きらんねおぼこだ。何とかええ方法ないべかて、みんなして考えて、いろいろな天の神さまから何から聞いてみたれば、ほの七年目んどき、酒飲ませて、んだどまた八年生きる。ほんどきに餅食せっど、こりゃ寿命まで生きる。こういう風になったてばよ」
「はぁ、ほうか、んだらほいつ、なぜして教えっだいもんだなぁ」
 て言うの、木の洞穴の中さ入った人、聞いっだんだど。次の日夜明けっど、
「ああ、木にも精ていうのあるんだな。何にも知しゃねでいだげんど、木だ、みな相談して人間ば長生きさせて ()るつもりでいるんだな、こりゃ」
 と思って、一番大きい木さ一晩の宿のお礼を申し上げて下ってきた。ほして来てみたれば、やっぱり自分のかぁちゃんが腹大きいがったもんだから、産婆さん頼んでおぼこ産して、安産していだっけ。
「ははぁ、あとここの村で、どこかさおぼこ生まっだどこあんべか、産婆さん」
 て聞いだれば、
「お宅だけだっす」
 て言うた。
「ほんでは、おら家の子どものことだなっす」
 て言うわけで、七年間たって、ほして酒飲ませ、こんど十五年目には餅食せだ。ほうしたれば、その人は順調に難なく、木の精の言うた通りに天寿を全うしたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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