26 団子どのじっちゃとばっちゃ、団子拵(こさ)って、団子、庭で臼で搗いで拵って、持(たが)っているうちに、一つ落ちたんだど。そして団子、コロコロ・コロコロて行ってしまって、穴ぽこさ入って、じさまもその穴ぽこから入って行ったど。小(ち)っちゃな穴こさ。団子どの 団子どの どこまでござる 御(み)山の堂までござる コロコロ ずうっとコロコロ・コロコロって、じさまなど追かけて行かんねごで、転んで行ってしまって…。ひこっと出たところが、広い原の地蔵さまの堂だったど。そしてその団子、地蔵さまの口さ、ぽんと入ったど。そしたら地蔵さま、 「いやいや、今の団子うまかった。御馳走さま、ここにいろ、晩げ面白いことあっから、おれの後(うしろ)さいろ、面白いことあっから…」 て教えたんだど。 あと、暗くなったら、鬼子どもらいっぱい来たんだど。袋かついで。お堂の前さ、ざぁっと輪組んで、その銭出して博奕打ち始めたんだど。さいころ振って、コロコロ・ポーンと。そりゃこっち丁と出たの、こっち半と出たの、そっち勝ったの負けたの、勝ったの負けたのて、ヤンヤンていたど。地蔵さま、ちぇっちぇっと、じさまに合図したとき、ウチワでパタパタして、コケコーと言えと教えらっだ 「コケコー」 「ありゃ一番鶏だ、いま少しだ。一生懸命で打てまず」 ヤンヤンて、負けた勝った、負けた勝ったているうちに、また、 「コケコー」 「こんど、二番鶏だ」 またしばらく経(もよ)って、こんどは、 「コケコー」 「そりゃ、三番鶏だ。ほら夜明けっぞ、まず明日の晩げまで置けはぁ、勝負は置けはぁ、こんでは分んね」 て、ガラガラ行ってしまったど。 「こいつな、持って行げ、こいつは団子の礼釈だ」 そうしてこんど、一つの袋さ皆積めて、やっと背負って、この穴から戻って来たど。そしてばんちゃが心配して待っていたっけど。 「なんだ、まず、じじちゃ来ねがったもんだから、一晩げ来ねがったもんだから、心配して待ってだほでに、どこさ行ってござった、まず」 「こういうどこさ、団子さ追かけて行って、鬼子どもら、博奕打ち始めたもんだから、地蔵さまから鶏の真似しろと言わっで〝コケコー〟と言うたば、夜明けねうちに逃げて行ったのよはぁ、そして地蔵さまに、そいつ持って行(い)げと言わっで、そいつ持って来たのよ」 て、庭さ蓆敷いで、ざぁっと開けたんだど。 「いや、こげな銭見たことないもんだから…」 じさまとばさま、魂消て、喜んではぁ、 「なじょしたらええがんべ、何買ったらええがんべ、こがな銭」 て眺めていたところが、隣のばさま、 「火呉(く)っでおくらえせ」 て、 「あららら、こっちの家で、こがえな銭どっから持って来たのや、どっから集めて来たのや」 て、 「はぁ、金持ちだも、金持ちだ。こっちの家はとんな金持ちになったもんだ。なじょなわけで、こがえな銭集めたもんだ」 そしたば、ばさま教えたど。 「おら家のじんちゃな、昨日(きんな)、団子拵(こさ)って団子転んだなよ、あの穴ぽこさ。そいつさ追かけて行ったのよ。そうして何処までも行ったらば、広い原さ行って、地蔵さまの口さ入ったのだど。そしたば、地蔵さま、ここさ、晩げ面白いことあっから泊ってろ、そうしておれに教えらっだ時、鶏の真似しろって言わっで、鶏の真似しったら、鬼共らこんど夜明けたはぁて、みな銭置いて行ったはぁ、その銭、地蔵さまからもらって来たんだど」 「ははぁ、ええごんだごでなぁ、こっちの家ばり。ほんじゃらば、おれもじさまさ団子拵えてあずけてやらんなね、こがえしていらんねまず、家さ帰って、団子拵え始めた。そして、 「おら家に穴あんべか」 て、鼠の穴さ、ろくなこと転ばねのを入(え)っでやったど。そして「追っかけろ」て、追けらしてやったんだど。そうすっど、じさま、行かね団子、押っつけ押っつけ、「団子どの、団子どの」て行ったど。そうすっど、やっぱり広い原の地蔵さまどこさ行ったど。そして地蔵さまのどこさ行って隠っで見っだど。そうして地蔵さまが「此処にいろ」とも何も言わねんだげんども、聞いて行った通りに隠っでいたど。こんど時刻になったれば、鬼共ら集まって来て、 「ゆんべな置いで行った銭、どこさ行ったべ、さっぱりなくなった。誰持って行ったべ」 ヤンヤンとなったど。 「ほんじゃ、仕方ないから持って来らんなねべ」 て、鬼共ら銭取りに行って持って来たど。そして、こんど始まった。うれしくて陰でいたじさま、何言うたって耐(こら)えてらんねくて、地蔵さま合図しねもんだから、自分でいいくらい加減にコケコーて言うて、 「なんだまず、鶏みたいだげんど、今夜の鶏はおかしげな鳥だな。昨夜(ゆんべな)も鶏でなかったがもしんねえぞ。見ろまず、ここら」 て言うたば、 「地蔵さまのかげに、じさまいだどら」 そうしたところぁ、鬼共らに引ずり出さっだど。じさま。 「このじじだごんじゃ、昨夜(ゆんべな)の銭持って行ったのも、このじじだな。このじじだば、くたばるほど引っぱだきつけてやれ」 て、こんどは片輪になるほど、せめらっで、そしてはぁ、じじ銭浚(さら)うどころか、したたか叩がっで、かっちゃばがっだりして(引っかかれたりして)、血だらけになって生命からがら逃げて、泣き泣き来た。ばさま待っていたど。 「なんだ、じじい」 て、泣き泣き来たもんだから、血だら真赤になって、「何して来た」と言うたら、 「銭浚うどころか、とんだ目に会った。昨夜な、おれでない、おれでない、おれなの持って行ったんでない、隣のじさまだ、隣のじさまだなて言ったって分んねぇがった」 「馬鹿じじいだからよ、隣のじじの番前までせめらっで来るじじい、あるもんでない」 うんとせめらっだど。 |
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