20 子育て幽霊

 寺の門前先きの飴屋さ来て、六文(銭)持って、
「あとこれきりだはぁ」
 て、飴買って涙こぼしたもんだから、不思議に思って、その飴屋が追っかけて行ったど。そしたれば、ずうっとお墓さ入って行って、そのお墓んどこさ行ったれば、すうっと見えなくなった。
「はてなぁ、奇態なごんだ」
 て思って、後つけて行って、次の日、墓さ耳あてて、こうして聞くと、赤子の音が聞える。そして掘り返えしたんだど。そうして掘り返えしたらば、その飴なめらせて、赤子育でっだんだど。
 んだから、大きい腹になったときには、「子別れのお経」をあげっか、また月満ちた時ならば、決して産させねでは、やらんねもんだど。幽霊になってからも、女は苦労するから…。そしてその子どもを飴屋が連れて来て育てて呉っじゃど。
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