(10)二十才が出た

 文殊山さ稼ぎに来てて、お月さまお出やったとき、
「ありゃ、東の山から二十才(はたち)が出た。二十才ぁ出た」
 むかしは暗くなるまで稼いだもんだからな。みんな魂消て、
「なにだごど、二十才ぁ出たざぁ」
「見ろまず、あれあれ」
「なんだ、お月さまだどら…」
「んだて、おぼこだざぁ、十三・七つって言うどら、十三さ七つ足したら、二十才だべちゃぇ、めんどうくさいから、おらぁ二十才て言うた」
 て。こういうことばっかり語って、人馬鹿にして歩いったって。
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