(7)死んだ馬が草食う

 入生田から露藤・中島を通って米沢さ行く、むかしの江戸街道に五輪窪というとこあるのよ。そこんどこ通って行ったらば、馬一匹死んでだったって。そうして、臭くて臭くて、寄ってづけなかったど。夏で腐って…。そいつ、佐兵ぁ見て来て、とんで跳ねて来たもんだから、若衆稼いだとこさ来て、
「あそこんどこに、死んだ馬、草食ってだけ」
「また佐兵ぁとんでもないことばり語んぜはぁ、死んだ馬、草食ったりしないごで」
 みんな、あしょらわね(相手にならない)げんども、あしょらった者もいだったずも。
「ほんじゃ、嘘だか何だか行って見て来い」
「ほだな、死んだ馬、草食ったりしてねごで」
「いや、行って見てこい、行くじど分(わ)かっから」
「ほんじゃ、佐兵、どこにいたか歩(あい)でみろ」
 暇な人だから、行くも。
「なじょだ」
「いや、臭くて臭くて、とっても寄ってつかんね、臭くて、臭くて」
「ほだべ、臭くて、臭くったべ、草食ったべ」
 いつでも、そういう風に、馬鹿にされんの承知だげんども、いつも引っかけんなだど。
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