(2)嶋蔵と佐兵の謎とき

 むかし、佐兵という、おどけたことばっかり評釈きりで他人(ひと)魂消らがしてばり話語る人だったど。そしてこの片目の嶋蔵さんという人は、これは学者だったど。そして、ここさ、通し佐兵があっちゃ廻りこっちゃ廻りして歩いたもんだからな、どこで飯食って歩くなんてないもんだから、そこさ泊ったど。
「ほんじゃ、今夜、佐兵まず、謎ときしんべ」
 て言うたら、
「ほんじゃら、おれから謎とっか」
「ええから、ほんじゃらば、佐兵とかけて、何と解く」
 て言うた。佐兵もなんぼ考えても考えらんねがったど。そうすっど、嶋蔵という人が、
「おれ解いでやる。佐兵とかけて、タムシと解く、その心は、〝ぐりぐり廻ってくる〟」
 そうすっど、家内中が大笑いしたんだど。
「親方、ほんじゃ、こんどおれが謎かけんべ、嶋親方とかけて、何と解く」
 その学者の親方もちょっと分んねがったど。
「御祝儀の盃と解く」
 皆んなだ、ちょっと分んねがった。御祝儀の盃なんて言わっでな。佐兵は、まず返報がえしすんなだから、何て言うんだか、と親方も待っていたど。
「その心は?」
 て聞いだ。
「その心は、〝一生のかため〟」
 んだげんども、苦虫つぶしたような顔面(つら)したげんども、何とも仕方なくて、「今夜ばりはぁ、貴様に敗けた」て、カブト脱いだど。
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