9 くいごこむかし

 じさまとばさま、くいごこ、めごくて飼っていたとき、
「ここ掘れ、キャェン・キャェン・キャェン・キャェン」
 と鳴くので、ここ、こう掘ってみっど、こっちからザク、あっちからザク、ザックザック・ザックと大判小判が出たのよ。そいつこんどじっちゃとばっちゃ庭さ寄せて、そして台所さ蓆ひろげて敷いて、並べてにこにこて見っだど。
 そこさ隣の家のいじわるばっちゃ、
「こんにちわ、火呉(く)っじぇおくらえせ」
 て、戸開けて来て、
「あらららら、こっちの家では、金持ちだごど、そがな銭、どこから集めて来たのや、どっからもらったのや、あららら、ええごんだごで、こがえ金持ちで…」
「こいつは、おら家のくいごこぁ、裏の畑さ行って、こっち掘れキャェン・キャェン、あっち掘れキャェン・キャェンていうて掘ったら、こういう風に金(かね)出たなよ」
 て、正直なばぁさんといじわるなばぁさん。
「ほんじゃらば、その犬借りで行かんなね。くいごこ貸してもらわんなね」
「貸さんね、貸さんね」
 ていうの、びりびり引っぱって行った。そして掘ったところぁ、
「こっちの方さ、ビダ。あっちの方さ、ビダ」
 ていうの何だというたれば、牛の糞、こっちの方さ馬の糞、糞ばり出た。
「かっげな畜生、おらだ家さばり、そだな糞あずけて、めごぐないからはぁ…」
 て、叩いて殺してしまった。そうしてはぁ、犬連(せ)て来ねもんだから、催促に行ったら、
「そつけなもの殺してしまった」
 そして、そこさ松の木植えたど。松の木植えたの、その木、ぐんぐんおがったど。そして松の木で、そいつ片見だからて、臼彫ったど。臼で米搗けば、こっちゃザク、あっちゃザク、と、また金がでた。そうすっどまた、隣のばさま、
「火呉(く)っじぇ、おくらえせ」
 て、火もらいに来た。そして無理矢理に臼をもらって行った。その臼借(か)っでいって、またこっちやビダ、あっちゃビダ、てビダ糞ばり出たので、ぶっ裂いて焼いでしまった。そしてこんど、焼いたの、
「灰ばりももらって行く」
 て持(たが)って来て、風ぁ吹いて、枯木さ花咲いたど。そして殿さまから褒めらっじゃど。
 そしてまた、隣のじさま真似したもんだから、殿さまに引っぱって行かっではぁ、牢屋の中さ縛らっじゃんだ。そして花咲じじいは正直だから殿さまから御褒美いただいて、一生安泰に暮したど。
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