11 和尚と小僧― 餅は本尊さま―あるところで、和尚が小僧と二人でいだったわけです。寺では肉や卵食べらねがったすな。その和尚さんがハタハタの寿しを、小僧にこっそり、小僧寝てから、酒飲みながら、寿しハタハタを焼いて食べてるわけです。小僧が小便しに起きたりして、何回も見つけたわけです。 「ああ、おれの和尚さま、おれちゃ隠して、ハタハタ食べてるな。いや、おれも食いだいもんだな。いつか食べたいもんだ。どこにあるもんだべな」 んだて、勝手に開けるわけにも行かね。 ある時、和尚さまが遠方の檀家の法事あって行ったわけです。晩になんねど帰って来ねわけです。 「やぁ、しめたもんだ。これだ、これだ」 というもんで、こんど、それをもってきて、焼いて食ってみたところが、何ととても耐(こた)えられねぇわけだ。うまくて。夢中になって食べすごしてしまったわけですはぁ。そして知らんぷりして蓋していたけぁ、和尚さまが夕方帰ってきて、 「小僧、いま帰った」 「ああ、帰ったすか」 「変ったことないがったべ」 「ああ、何もないがったす」 わらじ解いて足洗ってはぁ、それから部屋さ入って出てきたら、機嫌が悪いような顔した。 「ありゃ、ばれだべか」 と思って、 「小僧」「はい」「お前、納屋さ行って、桶の蓋とってみたべ」 「おれ、何も見ない」 「なんだて、納屋の桶の蓋とって見たはずだ、わからねはずないべ」 「何もかまわない」 それから、夜、和尚が寝てから、小僧こっそり起きて行って、飯、手でもって来て、ハタハタの飯を地蔵さんの口さ塗(ぬ)だぐっておいたわけです。そして知しゃねふりしていたけぁ、また、 「小僧こい、お前どこまでも食わねていうのか」 「おれだの、何も食わね。地蔵さん食わねすか。おれ、今飯上げに行ったけぁ、本堂の地蔵さんたち、みな、口さ飯くっつげっだ」 「うん、おかしいな。地蔵さん、寿しハタハタ食われるはずないべ」 「んだて、飯ついっでだもの」 なるほど、和尚さま行って見だけぁ、地蔵さま、みんな口さ飯ついでる。 「いや、これだば、おかしない」 ほれから、小僧が怒ってしまって、錫杖で頭叩いてみた。「お前食ったのか」ていうど、「クワン、クワン」て鳴るわけです。 「ほりゃ、小僧、何も食わねだ、これ。クワンクワンていう」 「んだら、和尚さま、煮てみたら、何とだべか」 「そうか」て、鍋さ湯、ぼんぼん煮立てて、こんど地蔵さま煮てみたわけだ。そしたら、「クッタ、クッタ、クッタ、クッタ」 それでまず、小僧の嫌疑はれではぁ、地蔵さまが、ハタハタ食ったことになったわけです。 |
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