7 山の神(一)

 山の神というのは、大工さんが祀っているのも山の神ですな。大工さんが棟上げのときに五色の旗と、女の化粧品一式ついてる。あれは山の神を形どったものですものな。五色の木綿も、いろいろな女のええ衣裳を現わしたもんです。
 
 むかし、一人の大工さんがあったそうです。それで棟梁がある立派な家を建てたわけです。建てたげんども、明日建てるてなってから、図面を調べてみたところが、何と、全部短かく切ってしまったわけです。大変だ、死なねばなんねぇわけです。殿さまの怒りにふれたら、腹切って死なねばなんねぇわけです。何とも地さもぐらねばならないという、困ったわけです。
 それから建てる日になってから、奥さんが、
「何か心配ごとでもあるか」
 ていうたが、喋らないわけです。それから、
「おら家(え)の人、何か心配あるんだか、さっぱり今日の建て方なり、張り切っている人いるに、何としたもんだべ」
 て、また聞いたわけです。そうしたところが、
「何と、おれ、柱という柱、全部みな短かくしてしまった。設計図、おれ見たつもりであったども、みな短かいがったずも。それで、おれ、死なねばならねぇはぁ、何とするべ」
 そうしたところが、おっかが、
「なんもなんも、そんなことなも、何も心配しなくともええだず」
「ああ、足すということあるもんだか」
「んだんだ。足すとええもんだ」
 なんとやると思ったら、そのかがが、鋸も持ったことのないかが、ちゃんとその設計図見て、後先さ塚を作ったわけです。こんどそっちの方さ嵌るように、長押さみんな孔あけらせだ、弟子だちに。そしてこんどやったところが、何と見たところがええわけです。それで塚というものは、かがに教えられた塚なわけです。それでかろうじて生命(いのち)助かったばりか、いち早く何と大棟梁になって、その辺のはぁ、切っての棟梁になってしまったはぁ。それでかがを祀ったのが、テオキオノミコトていうなだど。
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