27 ねずみ浄土

 むかしあったけど。
 じんつぁ、火野掘りに行ったけど。そしたら、昼飯のとき、ねずみ、ちょろちょろ出はって来たど。飯食せて、そのねずみさ追っかけて行ったど。そしたればいや、ねずみいっぱいいで、子ねずみが飯もらったこと話したもんだから、
「晩げ、餅搗いて食(か)せっから、食って行ってけろ」
 て、餅搗き始めたけど。そして、
   今年は三十三年
   猫の声も聞いたことない
   タンコリン タンコリン
 と、餅搗いたけど。そしていっぱいもらって帰ったけど。
 そしたれば、隣のばば行ったごんだけどなぁ。
「こがえに、餅、どっから出してやった」
 て。火種もらいに行ったど。そしたれば、いっぱい餅出しったもんだから、聞いたど。けなれぐなったど。
 そして真似したごんだど。そうして行って、飯食わせて、追っかけて行ったらば、ねずみ、また餅搗きしたけど。そしたればこんど、隣のじじは猫の真似したけど。
 そしたらば、灯、みな消して、どさが逃げて行ってしまったけど。やっと帰って来たって、泣き泣き。とーびんと。
井上こま
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