21 猿聟むかしあったけもなぁ。娘三人もってだど。じじが火野刈りに行ったど。ところぁ、今年みたいな日でりだべも、ほうして、暑いもんだから、 「だれか、三人娘いたもの、誰か助けて呉れば、娘呉る」 こう言うたど。ほうしたれば、山のオンツァマ出はってきたど。 「おれ、掘って呉る」 ていうたど。ほして、猿からしてもらったげんど、じじは娘さ言わんねわけだ。そうすっど、 「あさって来っから」 ほうして、一番大きな娘、 「ほづげなこと、さんね」 て、こういうわけだ。ほんで二番目の娘さ願ってみたど。これもさんね。こんど一番小(ち)っちゃこい十七ぐらいの娘、 「おれ、ほんじゃ、じんつぁ、おれ行くべ」 「ほんじゃ、お前迎えに来たら困んべ」 「おら、困んねもな」 こう言うど。その娘、一番頭がよがったど。そうしてこんど、いよいよ、オンツァどさ嫁に呉っことにしたど。ほして御祝儀したど。 ところが三月の節供に節供礼に、粟餅搗いたど。ところが、 「おら家のじんつぁ、持(たが)ぐど手くさいて言うし、ほかさ置くと、置きくさいという。臼がらみ背負って行って呉ろ」 ほうして、マンサクの花とって行かねど分んね。マンサクの花ていうな崩っぷちばっかりだ。臼がらみだから、五升餅背負って。ほして、娘はわざと落してやったど。娘はむごさいから、オンツァばおさえたど。んだげんども五升餅と臼背負ってっから、ドブンと落ちてしまったど。とーびんど。 |
井上徳次 |
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