14 さとりの化けもの

 じさま、山さ、カンジキ曲げ行ったどな。
 そしたば、見たことも聞いたこともない野郎コは、ひょこひょこと入ってきて、じさま、カンジキ曲げっだどこさ来たけど。したば、
「異なもの来た。なて、今考えっだな」
 なて、小僧いうごで。じさまの腹の中読んで、みな言うもんだけ。ほしてまた、「じんじは、不思議なもの寄ってきたなて考えっだな」
 て、腹の中、みな言うごどだど。ほして、なじょな拍子であったもんだか、カンジキ曲げっだな、バェンと手からはずっで、はじけて、灰ひっぱずっだどこだけな。そうすっど、
「ほう、ほう、あぶない、あぶない。この人は思いもかけないことすっどこ」
 なて、小僧、逃げて行ったけな。
井上徳次
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