13 丹波のしっぺら太郎むかしあったけど。じんつぁ、雑魚とり好きで、ずうっと山奥さ、犬連れて、やきめしでも背負って行ったもんだ。そして釣り釣り行ったらば、野宿しんなね。ぽっかり炭小屋さタイマツみたいなあるもんだから、雨しのぐに増したべと思って、犬と自分が行って、頼んだど。ところが女だ。 「一晩げ、休ませてけろ」 こういうたれば、「ええどこでねぇ」。こう言う。そして、 「飯食って来ねがったが」 ていわっで、 「やきめし持ってだから、何も心配しねたて、ええから、雨しのぎだけさせておくやい」 て、こう言わっじゃ。そして犬と親父は、雑魚さ塩ぬっだくって、そして食ったど。ほして一晩げ泊っていたどこ、夜中に、ガリガリ、ガリガリと音したんだど。 ところが、小便たれするふりして見たれば、姉さまが、とんでもない、狼みたいな女だけど。そうして犬も狼みたいだけど。 「これはうまい肉来たぞ」 ていうたもんだど。さぁ、こりゃ困った。ところが土佐犬だったそうだ。その犬ぁ。女の方は猫股だったそうだ。 次の朝げ、「お早う」て言うたれば、その姿見せねで、ぺろっと骨から肉からアゴはずして呑んだもんだどな。 「そっちの犬ど、おら家の犬と喧嘩させてみねが」 「いやいや、あの犬は猫股のあれだし、ノド一突きすっど、血出てくっから、そうすっど同じ一族で、同じに化けていっけんども、乱っで来っから、それもノド突くと終りだし、おれがノド突っから、そうすっど女はそっくり別の形相になっから、んだから九寸五分の刀でつつけ」 ていうて、そうして退治したど。 昔は、飯豊山に大日杉のとこにいたために、登山さんねがったげんども、それからは登るようになったんだど。 |
井上徳次 |
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