36 長手の伊佐

 伊佐ていう大泥棒は、笠、腹さあてて歩くじど、笠は落ちねがったほど早いの だったど。んだから、夜のうちに福島まで行って泥棒して来るがったど。
 このことは、みんな知っていっけんども、なかなか捕えようなくて、田の畔塗 りしったどこ、
「伊佐!」て言えば、「はい」ていうて、上がってきて、その足見たらば、水はいっ こう、くっついでながったていう。それは熱のためだど。
(佐沢・山田喜一)
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