34 佐兵ばなし― 豆腐のすだれ―

 佐兵が友だちさな、
「こりゃ、こりゃ、やいやい、豆腐で編んだすだれ見たことあっか」
「ばかやろう。ほに、すだれ、豆腐で編んだり、コンニャクで編んだり、されん めぇちゃえ」
「ほう、んじゃ、行ってみろ」
 ほして、連 (せ) て行ったど。
「こりゃ、どこにあっこど、豆腐のすだれ」
「そいつよ」
「葭 (よし) だ、でっか」
「ほだて、ええか。一封、二封、三封…十封。十封だべ、はいつ」
「また、テンツ語って」
 んだから、ちょぇっと賢こくて居っずど、〈佐兵のようだ〉というたもんだ。
(佐沢・山田喜一)
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