25 佐兵ばなし― 酒の篭抜け―

 むかしは、ここは御領と私領で、ここの和田は幕府の御領地だった。そして米 沢は羽黒川から向うは上杉家の私領だった。
 そうすっど、御領地というものは、年貢が安がったがら、物が豊富だった。そ のために、私領さ持って行ぐど、もうがっかった。
 そん時、佐兵ていうのが、酒運びしった。一番先に、番人が関所に立っていっ から、そこに新しいダンボ(酒樽)さ小便つめて、背負って行ったわけだごで。 して、役人にとがめらっじゃ時、
「小便だ、小便だ」
 ていうげんども、役人が、なえでかえで、見せろて聞かないわけで、降ろさせ て、飲んだら、やっぱり小便だったど。
 それから、次の日から毎日、酒をつめて背負って歩いだど。そして、なるだけ 役人の傍通っど、
「くさいがら、そっちゃ行げ」
 つうもんで、関所を通したど。そうして金もうけしたっていうから、佐兵てい うな、賢こがったんだべ。
(佐沢・山田喜一)
>>高畠町和田の昔話 目次へ