24 佐兵ばなし― 酒の篭抜け―

 佐兵が馬鹿なふりしているが、賢こい者。ほれがら、久ていうのは、賢こいふ りしている馬鹿な者。そいつぁ友だちだったど。
 ほして、その頃は、隣村さ酒など持って行がんね。んだから、持って行って向 うさ売れば、大した金もうけされっかったから、何 (な) じょがして、持って行きたい ていうわけで、酒樽の新しいのさ、小便つめて持って行った。そして、関所さ行っ た時、
「どこさ行ぐ」
 ていうたらば、
「肥料 (だら) 呉れに行くのだ」
「どこさ行ぐ」
「畑さ持って行って呉れんのだ」
「何だ、酒でないか」
 ていうたところが、
「酒でない。こいつぁ小便だ」
 ほしたば、匂いかいでみっど、酒の匂いぷんぷんするわけだ。酒樽だから、
「そいつ、酒でないか、持ってこい」
 て、開けて、かぽっと飲んだれば、小便だった。
「これ、駄目だ」
 ていうわけで、
「あぁ、持って行げ、持って行げ」
 次の日から、新しい樽に酒つめて、
「小便だ」ていうど、
「通れ!」て、隣村さ持って行って売って、そして、もうけたど。
(佐沢口・佐藤継雄)
>>高畠町和田の昔話 目次へ