17 せんだんの木

 すばらしい長者の家だったど。
 そこの一人娘いだったそうだ。その旦那さまが、タバコ一服喫 (の) むうちに、千ま で数えられる人いたら、聟にする。そういう立札を立てだど。
 ほうすっど、みんな、そういう家だから、聟さんなりだくて、「一、二、三、四 …」と数えっけんどもよ、なんぼ数えても数えても、千数える人、いながったそ うだ。
 そうすっど、ある日。
 やっぱり若い者が来て、
「んじゃ、わたしが数える」
 ていうたど。
「一 (いっ) くは二 (に) くは、三 (さん) くでないが、三くは七くは十 (じゅう) でないか。十 (じゅく) ・十 (じゅく) 、十 (とお) は百で はないか。百ずつ十 (とお) は千ではないか」
 ほんで、たちまち千数えたど。そういうわけで、
「いや、仕方ない。それでは聟さまにしねねぇ」
 て、聟さまにした。
 ほうして、しばらく経ったところが、むし暑い日だか何だか知しゃねげんど、 聟さんがすばらしい大蛇になってよ、裏のせんだんの木さからまっていたっけど。
 やっぱり、人間わざで出来ないことだど。んだから、あんまり高望みはしては 駄目だどいう話。
(佐沢・武田はる)
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