10 食わず女房むかし、欲のふかい百姓ぁいて、まだおかた貰わねげんども、「御飯食 (か) ね、稼ぐおかた欲しい」 ていたどこさ、ある日、来たていうわけだ。嫁がな。そして御飯も食ね。稼ぐ ことは稼ぐ、何言うたて御飯食ねもんだど。 そうすっど、その聟もふしぎに思って、ある日、梁の二階さ隠っで見っだとい うもんだ。そうすっど、御飯三升飯 (めし) 炊いだもんだど。 それからこんど、鯖三連も焼いで、何すっかと思って、どさ持って行くもんだ と思って見っだところぁ、他所に持って行かないで、こんどは自分の髪結ったな、 ほどいたところぁ、スリバチみたいな口開いだずう訳だごではぁ。その頭さな。 そしたば、よっく見たば、鬼なもんだど。ほして、三升飯と鯖、みなつめではぁ、 知しゃねふりしったのを、見つけらっだと分って、ほうして、追っかけらっじゃ わけだ。聟が。 ほして、何とも仕様なくて、こんど逃げて行った途中に、ヨモギとショーブの ある田んぼあったもんだから、そさ隠っでいたところが、鬼がそれきりで、来ね でしまったど。んだから、五月節句には軒さ、ヨモギとショーブさすのは、鬼よ けだど。どーびん。んだから欲のふかいことはするもんでねぇ。 |
(佐沢・山田喜一) |
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