4 猿と蛙むかしあったどなぁ。猿ど蛙が、「なんだって、餅食べたくなったなぁ」て相談した。ほうすっど、 「ここらの家で、今晩、餅搗くそうだな」 搗けた頃合いを見て、猿さんが、 「おれが盗み出すから、お前、裏の川さ入って、赤ン坊の泣きまねしろ」 そういう約束でいたそうだ。 ほうすっど、家中で一生懸命、餅搗き始まって、 「ああ、搗けた、搗けた」 なて言うてる時期に、こんどぁ、裏の川で、オフギァ、オフギァ、オフギァて、 赤ン坊の泣き声する。ほうすっじど、 「なんだ、赤ン坊、泣いてる」 て、餅搗きやめではぁ、提灯つけて、裏の川さ探しに行ったてよ。家中で探し に行って、誰もいねがら、まず、その間に盗んで行ったど。 「いっこう、何だて、居ねもんだな。騙されたみたいなもんだ」 なて、家さ帰ってきてみたら、餅がない。そうして大騒ぎになってるうちに、 お猿さんは、サエズリ山さ、かついで行っていっから、 「お前来い、そこさ」 て、蛙に言 (ゆ) ってだ。 お猿さんが臼かついで、蛙がこんど、ピタンピタン、ピタンと行くがら、時間 かかるわけだ。 ほうすっど、やっと山さ辿りついたば、頂上にお猿さんがいだんだど。ほして まず、 「分けて食うべ」 と、こうなったわけよ。そうすっど、 「いや、分けて食べんのでなく、臼、こっから転ばして一番下さ、早くかけつけ た方が食べるんだ」 ていうわけだど。 そうすっじど、蛙は遅いから、食べられる見込みないがら、 「そがなこと言わねで、分けで食べんべ」 「いや、ほでない」 て。そうしているうちに、臼、ゴロゴロと転がしてやったもんだがら、食べる も食べねもない。 ほして、追っかけて行ってみたら、お猿さんは臼より早いくらいなもんだから、 臼あけて見たらば、いっこうに無がったんだど。ほして、上の方見っだれば、木 さ、ちょこんと引っ掛っていだってよ。 ほして、蛙がそこまで来て、一生懸命食べっだったてよ。したらお猿さんが、 「蛙どの、蛙どの、少し分けて食べさせてください」 「いや、そういう約束でない。早く着いた者が食べんのだから、おれ一人で食べ んなだ」 「いや、そう言わねで、分けて呉っじぇおぐやい」 そういうもんだから、 「んじゃら、赤目してみろ」 ほうすっど、千切って、餅、その目さぶっつけだど。 「あつい、あつい、あつい」 て食うど、食い終わったもんだから、 「いま少し、蛙どの、呉っじぇおぐやい」 「んだら、お尻出せ」 ほして、お尻さ丸めでぶっつけたど。ほうすっど、 「あつい、あつい、あつい」 て、お尻から取りがただど。んだから、意地のわるいことはするもんでないど。 どーびん。 |
(佐沢・武田はる) |
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