24 とりおやじ(1)

 すす茸(たけ)の取りつけさ行ってみたれば、すす茸一本も出てない。不思議なこともあるもんだと思って、トコトコ降っで来たれば、すばらしい大きい沼あっけど。
「なんだべ、何時こさ沼出来たべ」
 と思って、金山の蛇(おりや)が尻尾パタパタして出来た沼でもあっかと思って、しばし眺めっだど。
「しかし、深さどのぐらいあんべな」
 と思って、楢の木切って深さ測んべと思ったれば、そいつぁガグラーッとひっくり返って行ったけぁ、はいつぁすす茸だった。
 そしてひっくら返えっどき、川へなって流さっで、ほして、ほだい流さっで行ったら、死ぬどなんないと思って、一生懸命泳いで、木の棒杭(ぼっくい)さたぐづいたど。ところが、そいつぁ兎の伴足だった。ほうすっど兎は後足おさえらっだもんだから、前足で一生懸命掘ったらば、そこさ山芋五・六貫匁ばっかり掘らっだけ。んでこんど、山芋掘って、すす茸はほだいいっぱい持って来らんねんだし、後で馬車ででも運ぶかと思って、山芋と兎と、まず持って来た。家さ来たれば、足あたりコチャコチャすっど思ってモンペ脱いでみたれば、ドンジョ五・六升入っていだっけなて…。
>>佐藤家の昔話 目次へ