18 和尚と小僧(小僧改名)

 むかしとんとんあったんだけど。
 ある村にとってもとってもネッピ(けちんぼ)な和尚さんがいだんだけど。ほしてその和尚さんが檀家ずうっと廻って来て、法事さ招ばっだりして餅なんかもらって来て、小僧さなの食せっざぁないんだど。そこに小僧が三人いだんだけど。小僧だ三人が考えたんだど。
「いや、和尚さんばり餅食って、おらだもたまには餅食(く)だいもんだなぁ、何とかうまい考えないべがなぁ
 一人の小僧さんが、
「いや、ええごどある」
「うん、ええごどざぁ、どういうごとだや」
「いまから、おらだ改名すんのよ。改名ていうど、名前ばとっかえんなっだな」
「うん、ほだえ、ええことあるもんだか」
「あるある」
「ええか、和尚さまが、おらだは寝ろ寝ろて言うて、火鉢さワタシ掛けて餅あぶりする。そうすっど餅がプウプウてふくれる。んだど〈ああ、アツツ〉て取って後ぁ〈ウマイ〉て食うべぁ」
「ほだ」
「んだれば、ええ考えある。お前プウプウて名付んのよ」
「おれ、プウプウか」
「お前、アツイアツイて名付んなよ」
「おれ、アツイアツイだな」
「ほして、おれ、最後にウマイウマイて名付っから」
「うん、ほだいうまく行(い)んかな」
「いや、行ぐ」
 次の朝げ、
「和尚さん、和尚さん」「何だ」
「今日から三人が名前とりかえることにしたっすはぁ」
「なして、何んた名前だや」
「はい、おれはプウプウて名付かります」
「おれはアツイアツイて名付かります」
「ほう、変な名前だな、うん、ええがんべ」
 そして次の日また法事さ招ばっで、大きい餅もらって来た。流し前で一人でトントン、トントンて切って持ってきて、火鉢さ火おこして餅あぶりはじめた。まもなくプウプウて二つ三つふぐっだ。いきなりプウプウ起きて行った。
「和尚さん、和尚さん、お呼びでございますか」
「おい、なんだ」
「プウプウで」
「ああ、ほうか、プウプウてお前名付かったんだな。他でもない。今日餅もらって来たから、お前さ一つ二つ食せっかと思って起したどこだった。あ、ほら一つ食えまず」
「御馳走さまでございます」
 プウプウに餅一つもらわっだ。
「はいっとう。ほに、餅一つ取らっだ。おおアツイアツイ、アツイ」
 したら、こんどアツイアツイが起きて行った。
「和尚さん、和尚さん、お呼びでございますか」
「うん、ほかでもないげんども、檀家さ行って餅もらって来たから、お前ちゃ一つ食せっど思って起したどこだった」
「はい、御馳走さまでございます」
「寝ろな」
「はいはい」
「こいつぁ、ほに、二つ食(か)っでしまった。こんどはおればり食(か)んなね。いやウマイウマイ」
 こんどはウマイウマイが起きてきて、
「和尚さん、和尚さん、お呼びでございますか、ウマイウマイでございます」
「ああ、ウマイウマイか、実はな、檀家さ行って餅もらって来たから、ウマイウマイに一つ食わせっだいと思って起したどこだっけ、さぁ、餅食って寝ろな」
 ほして、三人が御馳走なって、
「うまく行った」
 て喜んで寝たんだけど。
 次の日、こんど、
「野郎べら、家さ置いたからうまくないがった。そっちこっちさ用達しにやらんなね」
 て言うわけで、
「こっちゃ行って来い、お前はそっちゃ行って来い、お前は町の方、お前は山の方、お前は川の方さ用達しに行って来い」
 こういう風に言うた。
「はい」
 なて、みな出掛けた。
「こんだ、なぜかする方法ないべか。きっと和尚さんのごんだから、火鉢さ餅あぶねはぁ、囲炉裡の火所(ほど)さあぶっかも知んない。ほいな見たことあったも。朝げんだと見えっからて、灰掛けてあぶんまな。あいつぁ」
「ほだほだ」
「んだらばええ考えある。おれ入る、お前入る、それからお前も入る。三人つうとずらして入って来んべ。ほうしておれは、この馬あばれて、こういう風に跳ねこずけたどや。そっち行ったこっち行ったて、馬ぁそっちゃ走り、こっちゃ走りしたって、火箸でみなほじぐって呉(け)っから」
「よしよし」
「んだら、おれ帰って来て、和尚さん、和尚さん、どこそこの家見て来たれば、素晴らしい家だけ垣根がこういう風にあって、坪がこういう風にあって、ここさトントンて杭打って、こっちの方さもトントンと杭打つと、おらえのお寺さまもええあんばいなっけんどなぁ。御堂(おみど)の方、トントンと杭打って、裏の庫裡の方さもトントンて杭打って、餅みな刺すべ」
 ほしているうちに、
「一番最後の君は、〈ああ、恐っかないがった、恐っかないがった〉て、ガラガラて走って来い。んだど三人して皆はいつ御馳走なるべな」
 て相談したんだど。ほうして用達して帰って来て、
「和尚さん、和尚さん」
「なんだ」
「いや、あばれ馬あばっで、あばっで、後足跳ねこじけて、何とも仕様ない」
「どだなことあばっだ」
「ちょっと火箸貸してけらっしゃい。こだなだけぜえ、まず」
 て、バンガラバンガラ、みな餅掘り起こしたんだど。
「あらら、餅出はった。あららら、餅出はった」
 ほだいしているうちにこんど、次の小僧こ来て、
「和尚さん、どこそこの坪前見て来たれば、すばらしいええあんばいだっけ。おらえのお寺さま、ああいう風なこと、御堂の方さトントンて杭打って…」
 て言うど、火箸でトントンと餅つついて、一つほっくり出した。
「庫裡の方さもトントンて打って」
 て、また次の餅さトントンて刺してしまって、みなほっくり出した。ほして今度は、こだいしているうち一人の小僧こはあわてて走って来て、
「いやいや、たまげた、たまげた」
「何、ほだい、たまげたや」
「すばらしい大きい蛇出て、蛙(びつき)でも蛇でも、こういう風にみなのむのだぜ」
 て言うて、餅噛まねで食いはじめた。
「あらら、ほだごど、こういう風にか」
 て、他の人もみな真似して、つるっと餅、和尚さんが食(か)っだけど。んだからあんまり世の中、ネッピにさんねもんだど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
>>佐藤家の昔話 目次へ