16 赤い小箱(花咲爺)

 むかしとんとんあったずま。
 あるところに、おじいさんとおばぁさんがいだけずま。おじいさんが山さ柴刈りに行ったずま。ばんちゃんは川さ洗濯に行ったれば、赤い小箱と白い小箱が流っで来たんだっけど。ばんちゃが、
  赤い小箱 こっちゃ来い
  白い小箱 あっちゃ行げ
 て言うたれば、白い小箱はメクメクて泣いてあっちの方さ行ってしまったんだど。そして赤い小箱はこっちの方さ、ニコニコと笑いながら、すうっと流っで来たんだど。ほうしたれば、ばんちゃは洗濯もの川さ置いで、小箱拾って家さいそいで帰って来て開けてみたら、ちっちゃこいクイゴコ入っていだんだけど。ほしてばんちゃが、
「クイゴコ、クイゴコ、よくおれの家さ来て呉たな。お前何が一番好きだ」
 て聞いてみたんだど。したれば、
「小豆飯(まま)と魚(ざざ)、好きだ」
 て言うたんだど。ほして、毎日雑魚(ざざ)こ買ってきて、最初猫の茶碗で食せたれば猫くらいおがったんだど。犬の茶碗で食せたれば、犬ぐらい大きくなったずま。ほうしてこんど人の茶碗で食せたらば、人ぐらい大きくなって、牛(べこ)の吊し桶で食せたれば、牛ぐらい大きくなってしまったんだど。
 ほしてある時、おじいさんが大きな魚買って来たんだど。ほしてクイゴコは、
「おれ、金の出るどこ知ってるから、今日、天気もええから、山さ金掘りに行くべぇ」
 て、大きな車引っぱって来たんだど。ほして、
  じんつぁものれ クェンクェンクェン
  ばんちゃものれ クェンクェンクェン
  唐鍬もつけろ クェンクェンクェン
  ハケゴもつけろ クェンクェンクェン
  カマスもつけろ クェンクェンクェン
 て、いろいろ金掘り道具、車全部つけだんだど。ほして山さ行ったんだど。ほして、
  ここ掘れ クェンクェンクェン
  そこも掘れ クェンクェンクェン
 ほうしたれば金がゾクゾク、ゾクゾクと掘るたび出てきたんだど。ほうしたら、大金持になったんだとはぁ。ほして、はいつ見てた隣のばんちゃが、
「クイゴコ、おら家さ貸せ」
 て来たんだど。ほして借りでって、こんど隣のばんちゃが山さ連(せ)て行って、出るても言わねどこ掘って、ほして、瀬戸かけなの、カワラなのばり出てきたからごしゃえでクイゴコば殺してしまったんだどはぁ。(以下「花咲爺」になる)
>>佐藤家の昔話 目次へ