10 豆腐・大根・人参・牛蒡

 むかしむかし、豆腐さんと大根さんと人参さんと牛蒡さんといだんだけど。四人は仲よしで毎日、ほっちゃお茶飲みに行った。こっちゃ招ばっだて暮しったんだど。したれば、何な加減か豆腐さんが病気してしまったんだど。そして、
「ああ、豆腐さんが病気してはぁ、見舞い行かんなねっだな、なぁ」
 て、大根さん、人参さん、牛蒡さんが相談したんだど。
「んだら、大根さんに行ってもらうかぁ、代表して…」
「うう、おらまず、洒落っこで、お粉白なのばりつけていっから、色白い過ぎて何だておら、具合悪れべし、お見舞いなの」
 て言うたんだど。
「んでぁ、牛蒡さんさお願いすっかな」
 牛蒡さんが、
「おら、百姓なもんだから、色黒くて何だてこの通りヤボくさくて、とっても、おれではうまくないから、人参さんさお願いすんべ」
 て言うたんだど。したば人参さんが、
「あぁ、おれぁ行ぐななの、ええげんども、酒好きで酒好きで、朝げから濁酒(どぶろく)だの何だの焼酎だのて、毎日酒飲みばりしてるもんだから、顔赤くて、ほんとでないべぁ」
 て言うたんだど。
「ほんでは仕方ない、大根さんさお願いすんなねべなぁ、色白いたて苦なねべぇなぁ」
 て、みなして大根さんさお願いしたんだど。大根さんが豆腐さんのところさお見舞い行ったんだど。
「豆腐さん豆腐さん、病気の方は何(なん)たっす」
 て聞いたらば、
「大分ええぐなったんだげんどっす、何だかお医者さんに聞いてみたらば、元の豆にはならねようだどっすはぁ」
 て、だけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
>>佐藤家の昔話 目次へ