8 夢の峰

 むかしとんとんあったずま。
 あるところで友だち二人が山さ草刈りに行ったずま。そして一生懸命刈って、大分刈ったから、まず昼間して、昼休びでもすんべていうわけで、昼休びした。
 ところが、友だちはすぐ眠てしまったんだど。いびきかいではぁ。ほうしたれば脇の人が見っだら、鼻の穴の中から、蜜蜂のような蜂がクンクン、クンクン、クンクンと、どことなく飛んで行ったんだど。ほしてまた、いづこともなく、クンクン、クンクン、クンクンと、蜂がどこへ行って来たものやら、飛んで来て、鼻の中さ、チョロチョロ、チョロと入って行ったと思ったら、ムニャムニャムニャなて言うたけぁ、のぞけて起きたんだど。ほれ見た人が、
「今んな、たしかに魂が抜けて行って遊びに行った」
 ていうことを直観したんだど。ほして、
「君、君、何か夢見ねがったがや」
 て聞いだんだど。そしたば友だちは、
「いや、おら、生まっで初めてあだなすばらしい夢見た」
「どげな夢だけ」
「いや、あるどこずうっと行ったれば、大きな川のようなものあって、そこば通って、岡のようなどこあって、真白い椿の木があって、下に何やら洞窟みたいになってで、そこさチョロッと入ってみだれば、中はすばらしい鍾乳洞みたいになってで、金のボンダラ(つらら)が下がっている。あたりほとりぁみな金。山吹色の天然の金があそこにもここにもいっぱいあったていうたんだど。ほうしたら、脇の人、話もそこそこ聞いではぁ、目の色変えで走って行ったんだどはぁ。草なの、ぶち投げではぁ。ほして、教えらっだ道順通り東へ、また西へ、川・岡・白い花の椿の木・洞窟、ずうっと辿って行ってみたんだど。ほしたらやっぱり目の覚めるような夢の話と同じ金があったんだど。そいつ、もぎとって来て売って、一躍すばらしいお大尽になって、そこら界隈一の大金持になっておったんだどはぁ。ところが夢見た本人は、相手がなしてあんな大金持になったか不思議で不思議でたまんねんだど。ほしてふっと脳裡にひらめいたものが、
「ああ、あの昼寝のときの話のとおりに行ったに相違ない。おれも行ってみんべ」
 と思って、せっせと仕事をはかどらせて、ほして仕事を終らがして夢の記憶を辿りながら、川、それから岡、白い椿の花の方の洞窟て、ずうっと行ってみたれば、白い花の椿は前の人の見たより、まだまだ大きくきれいに咲いっだんだけど。洞窟の中の金のボンダラも何倍も大きく、またすばらしいがったんだど。ほしてそいつば売って前の人よりお金持になったんだど。前の人はあんまり一時に働かねでお金が入ったので、身持ちくずしてはぁ、栄光栄華を極めでために、没落してしまったんだけど。そしてほんとうに夢見た人は、大切なお宝を貧しい人にめぐんだり、また道普請などに有意義に使って、後(あと)あとまでに夢の蜂のお大尽、お大尽て言(ゆ)ったんだけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
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