45 首切り役人

 むかしあったけど。
 都に紫の大徳寺というお寺があり、そこに賢こい和尚さんで、一休さんという和尚さんいだっけど。その和尚さんと大変仲よしのお侍で、お上の罪人の首切り役だった久米の平内という強いお侍がいだったけど。
 ある日、雪の降る日お寺さ遊びにきて、いろいろ話の末、和尚さんが、
「平内やお前も大抵にして、首切りなど止めてはどうだ。そうでないと、お前に嫌われた人のうらみがかかるぞ」
 と言ったど。そしたら平内は、
「おれは何もわるくない、お上をうらむがよい。お上の命令でやってるんだから、うらむなら、お上をうらむがよい」
 と言ったど。和尚さんは、
「ああ、そうかそうか」
 と、さからわず、縁側に立たれ、
「平内や、あまり竹に雪が掛って重そうだから、落してくれないか」
 と頼んだど。平内は「はい」と、気易く立って庭に出て、竹の雪をはらったど。そしたら竹はピンとはね上がる時、平内の体に雪がバサッとかかっど。そしたら和尚さんが、
「どうだ平内、命令したのは、おれだが、雪をはらったお前だ。そのお前に雪が掛ったではないか」
 と言わっで、はじめて平内も悟り、お弟子さんになり、自分が首を切った人々のめいふくを祈り、一生を送ったけど。むかしとーびん。
 
〈話者 川崎みさを〉
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