42 菅原道真

 むかし、菅原道真公に、親は伯大夫という人に、三人の男の兄弟いでやったって。梅王丸に松王丸に桜丸。それがこんど、梅王丸は、道真公がどこかへ流されるとき、自分の身の危険をさとったもんだか、自分の身かくしてしまったもんだど。そのとき、松王丸はこう歌よんだど。桜丸は腹切って死んだのだど。
   桜は枯るる世の中に
    何とて松のつれなかるらん
 て、そう歌よんで、自分も腹切って死ぬなだども、その前に道真公の子ども、自分の子ども身代りにするなであったど。寺小屋さ上げるとき、松王丸の奥方は、
「千金、二千金、三千世界の宝の里、教える人に習う子ら」
 て、そう言って、寺小屋さ、わが子あげでであったど。そしてこんど道真公の子どもおさえて、殺されるということになったとき、その子どもをかくして、我が子を道真公の身代りにして、首にして差し出したど。そしてこんど我が子もそういう風にしたもんだから、松王丸も辞世の歌のこして、自分も死んであったけど。
 
〈話者 川崎みさを〉
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