40 田の草取りむかしあったけど。越後に大百姓いでやったど。そしてこんど、大百姓なもんだから、田も大きな田ばっかり持ってであったど。若衆もいっぱい置く…。そしてはぁ、秋になっど、どうもその田の真中ごろええぐないもんだずも。それから、その旦那、あるとき田の草取んねで、ぐるりばかり取ってだなであったど。 「いや、これでは困った」 ど。そう思ってある日、こんど五升樽背負って行ったど。そしてこんど、田の真中さ五升樽置いて来たごんだど。そして若衆上って来たど。 「にさだ、どこそこの大田、田の草取ったか」 て、こう言うて聞いたど。 「取ったぜ、旦那さま」 て、こう言うずもの。 「何か変ったことなかったか」て聞いたずも。「何もなかったな」て言うずも。「ほだらええし。明日いま一ぺんその田の草取ってみねか」て、こう言うたど。若衆、「異(い)なこと言う、おらだ真中取んねがったこと悟らっだかな」と思って、「今日は仕方ないから、まず真中まで取っか」て、みんなで取って行ったど。そしたら五升樽一本立ってあったど。そうして、こんどは田の草とって、夕方それ持って来たど。 「いや、旦那さま、申訳なかった。実は真中の田の草とんねでだであった。今日は取ったば、五升樽あった」 て、そう言うど。 「それ、お前だ真中まで丁寧にとった御褒美に、おれ置いたなだから、お前だ、今夜飲め」 て、そう言わっで、若衆喜んで飲む、それから若衆も改心して、仕事は粗末にしないようになって、ますます大百姓になってあったけど。むかしとーびん。 |
〈話者 川崎みさを〉 |
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