38 股大根

 お大黒さまという人は、何ぼか餅の好きな人であったずも。そしてあるとき、招ばれて行って、あんまり餅食ったもんだから、腹せつなくてはぁ、うんうんうなって寝てたごんだど。そうしたば大根売りのおっか通り掛ったど。
「おいおい、おい、大根一本ゆずって呉ろ」
 て、寝てて、さなったど。
「いやいや、今日のなは、注文でとてもゆずらんね」
 て言うたど。
「そう言わねで、おれぁあんまり餅、昨日(きんな)食ったば、今日も切なくてとても起きらんねとこだから、どうか一本呉っでおくやい」
 て、こう言うたど。んだども、見てたけざぁ、
「いやいや、二股大根あるから、そうせば本数は何本と約束してきたなだから、呉(く)れらんねども、この二股大根さいで、ほんだら呉(く)っで行くから」
 て、二股大根さいで食って、その大黒さまが大変よくなって治ってあったど。生命拾いしたど。んだから、大黒さまは二股大根、そのためにお供えするもんだけど。むかしとーびん
 
〈話者 川崎みさを〉
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