37 人柱の話むかしあったけど。むかしは今とちがって、百姓衆は水に困っど、堤というもの拵えたもんだど。あるところに大きな堤拵うべと思ったども、土手つくど崩れ、つくどはぁ、崩れするごんだずもな。 「これは何か人柱でも立てなければ、駄目なのだと、おれ、人柱立てることにすっだい」 て、そこの名主さまはこう言うたど。 「そんでは、まず、誰ば立ててええていうもんでないから、今日来った人の着物のうちで、横継ぎにつがっていた人は、人柱にすっから」 て、名主さま、そう言うたど。そうして、みんなの着物しらべたど。タッケやら、そしたば、名主さまの袴さ、横継ぎつがってたど。自分が言い出したもんだから、仕方なくて、名主さまがその堤の人柱になって、そしてはぁ、無事にその堤もできあがってあったど。んだから、男の着物さは横継ぎはつぐもんではないど。むかしとーびん。 |
〈話者 川崎みさを〉 |
>>さとりのお化け 目次へ |