28 食われた餅-和尚と小僧-

 むかしあったけど。和尚さんと小僧二人いでやったど。そして和尚さん、餅他(よ)所(そ)からもらって来たども、
「こりゃ小僧に呉れっど、おれ、腹一杯食(か)んねもの、土尾の方に、何か見せもの来たずから、そこさやって、それからおれ焙って食うべ」
 て、そう思って、
「小僧、小僧、にさだ二人ではぁ、今日土尾さ遊びに行って来い、暇くれっから」
 て、出してやったど。と、小僧だちも餅もらったこと知ってたもんだから、
「こりゃ、和尚さま、おら、いね後に食う気であんめえか」
 そう思ったど。そしてまず、そこらまで行って、ちいと油売って、和尚さま焙り出したような頃、もどって来たど。そして下相談したずもの。
「お前、先に声かけろ、おれこの節穴から和尚さまどさ隠すか、見てっから」
 こう相談して、そして節穴から一人の小僧はのぞっこんでいたど。ちがいない。和尚さま焙っていたそうだ、ワタシさ。そうすっど、一人の小僧、
「和尚さま、和尚さま、今来た」
 て、廊下で声掛けたど。
「いや、早く来らっだ」
 と思って、和尚さま気ぃもんで、囲炉裡の灰(あく)ほげて、そさ、みなフクレ餅埋めてしまったど。そしてそれ、節穴から見っだ小僧、こんど廊下さ行って、
「こういう風にしたわ」
 て、教えたど、別な小僧に。そして二人で入って行ったど。
「ひどい早く来たな、にさだどんなこと見て来たや」
 て。
「面白いないけから来たはぁ、和尚さま」
「ほんだら、どんなもんだけ」
 そうすっど、小僧たち二人で火箸つかんだずも。
「こんなこと、したけなぁ」
 て、囲炉裡突っついたら、みな餅、火箸さ刺さって来てしまったど。そうして小僧たちにみな食わっであったど。ほだから、食い意地などしないで、小僧にも分けて食せれば、和尚さまも食(く)ってあったども、みな小僧に食(か)っであったけど。むかしとーびん。
 
〈話者 川崎みさを〉
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