23 福の神

 むかしあったけど。
 あるとき、福の神さまが、そこらのええ家を覗き見して歩ったど。そしてある家の夕飯時であったど。今のように電器釜などない、鍋で炊く時代なもんだから、御飯(おまま)煮立って来っど、そっちふくれ上がったり、こっちふくれ上がったりするもんだから、飯(まま)箸(はし)でかきならすわけだ。
 そしてこんど、どの程度柔らかいか固いか調べるなな、それ、こんど一人のおかみさんは、はさんで一粒の御飯つぶしてみて、また元の鍋にもどしたど。そして隣家さ行って、また見たど。そしたば、そこのおかみさんは箸でやってだな、一粒とって、フニャフニャと食べてしまったど。
「こんな不精な家さは立ち寄らんね」
 て、さっきのつぶして返した家さ寄んなねって、神さまはそこの家さ寄ってあったど。んだから、たとえ人いねっても、不精なことするもんでないど。むかしとーびん。びったりさんすけ釜の蓋、灰で磨けばええ銀玉、ナァ、さんすけふんはい。
 
〈話者 川崎みさを〉
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