19 二十四孝むかしあったけど。一人の親孝行な息子、毎日、仕事に行って帰りには酒買って来(き)い来(き)いしたど。父親、酒好きなごんだから。そしてある日、働き少なくてはぁ、酒買って来らんねがったど。そしてヒサゴ(フクベン)持って行くなだども、 「困ったこれ、酒買えば、米買わんねし、今日は稼ぎ少なくて…」 と思って来たらば、滝どんどん、どんどんと流れでる滝の傍まで来て考えたごんだど。 「この水、酒だったら、どんなに仕合せなんだかなぁ、まず仕方ない水でも一回飲んでみっか」 と思って飲んだど。そしたば酒の味すっずもの。 「いや、これは神さまのお授けだ」 と思ってはぁ、そのフクベンさ水汲んで来たど。そして「おどっつぁ、今帰ったぜ」て、そしてそれ飲ませてみたらば、やっぱり酒であった。 「いや、今までにない、うまい酒、にさ買ってきて呉(く)っだなぁ」 て、喜んで飲んだずも。そしてはぁ、それ憶えて毎日はぁ、 「これ、あしたも汲んでも酒なんだかなぁ」 と、次の日も行って汲んでみたば、やっぱり酒だずも。そしてはぁ、毎日上がりにその酒買うので、滝の水汲んでくるもんだから、暮しも楽になって、父親もええフトンも着られるようになってはぁ、仕合せに父親ばも安楽させて死なせてやったけど。むかしとーびん。 |
〈話者 川崎みさを〉 |
>>さとりのお化け 目次へ |