7 ネズミといたちの寄合田

 あるところに、わずか離れて、ネズミといたちいだったけど。そしていたちは一生懸命に火野(かの)刈ってはぁ、粟蒔いたずも。そして粟も実入った頃だし、刈って来っかと思って行ったば、一本もないずも。
「何だべな。こがえに一本もないわけない。なじょになったんだか」
 なて、
「いま、一(ひと)どこ蒔いたどこあっから、行ってみんべ」
 と思ったら、途中に牛寝っだけど。
「牛どの、牛どの、おれ、越前の川原さ粟蒔いたの、一本もない。お刈りやんねか、キチョキチョ、お知りやんねか、キチョキチョ」
 て言うたば、
「おれ、何知んべやれ、メー」
 て言わっだど。牛なんだから…。それからまた一枚の火野さ行ってみたれば、また一本もないど。そしていたば、ネズミ出はって来たけじゃ、
「おれ、越前の川原さ、粟蒔いたキチョキチョ、お知りやんねが、キチョキチョ、お刈りやんねか、キチョキチョ」
 て言うたば、
「人のものも、ツツー、われのものも、ツツー」
 親ネズミ、そう言うてだけど。そのうちに子ネズミ出はってきたずも。そして、
「ダダ、ダダ(母)、ゆんべなの粟団子食(く)だい」
 て言うた。
「ほら見ろ、おみだべや(お前だろう)、おれ、あの難儀して刈ったな、それで拵えた粟団子食たいて言うなだべや」
 どこさしまっていたって家中さがしてみたば、戸棚、このようなどこさ粟団子いっぱい入ってだけど。そしてこんど常づね仲よくないネズミ、なおさら、それでは、いたちとネズミ、一生仲ちがいで暮らしたど。むかしとーびん。
 
〈話者 高橋しのぶ〉
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