4 狐とかわうそあるところに、狐とかわうそ、たんと離っでいないで、川の上の山のあたりに、狐住んでいたんだべな。そしてかわうそと行ったり来たり暮しったど。そして毎日毎日、かわうそは雑魚とりぁ上手で、取ってきて焙っていっど、狐ぁ遊びに来て、「また焙っていたな、昨夜(ゆんべ)なも、採ったな」 て来(く)っずも。そして、 「ええから食って行げ、おれまた、晩げも取っから」 て、御馳走してやって、 「明日(あした)は、ほだら、何かこんど珍らしいもの取ってきて、御馳走すっから、あしたは、おらえさ来て呉(く)ろ」 て言うもんだから、次の日、かわうそ行って見たずも。そしたば狐はテンコ吹いて、 「狐どの、狐どの、居やったが」 て呼ばっども、決して音立てねずも。 「何だべ、どこ悪(わ)れんだが、こんなことではなんぼ呼ばったて駄目だから、戻って行くべ」 て思って、かわうそは空(から)戻りしたずも。そしてこんどまたその晩げ、雑魚いっぱい採って焙っていたば、また狐来たど。 「昨日(きんな)、おれ行ったども、何なんだか上ばり見てて、なんぼ呼ばっても声立てねけぁ、どこか悪がったが、よく治って来(こ)らっだな」 て言うけぁ、 「いやいや、昨日(きんな)は天(てん)守(まむ)りという病気に憑がっで、とても音立てらんねがったがら、明日は何か御馳走作って待っでっから、どうにでも来て呉(く)ろ」 て、 「また今日もはぁ、この御馳走、おればり御馳走なって行んか」 て焙ってだ雑魚みな御馳走になって行ったど。 そうしてまた次の日、かわうそ行ってみたば、 「狐どの、狐どの、居てやったか」 て言うど、また音立てねずも。なんだか音立てねど思って、隙間から見たらば、こんどは下向いて、さっぱり音立てねずも。 「なんだ、どこか悪(わ)れか」 て言うども、音立てねから、またかわうそ空戻りしたど。そしたら次の日行って、 「いやいや、昨日(きんな)も来て呉っだような音すっけども、昨日はおれ、地(じ)守(まむ)りに喰付がっで、下ばっかりほか、見らんね病気に喰付かっで、音立てらんねがったもの、申し訳ない、あやまりに来た」 そしてこんど、 「今日も雑魚あっから、食って行げ」 て、はぁ、かわうそは狐に御馳走したど。 「よく上手にとるもんだ、こがえにおればり御馳走なていらんねから、こんどおれも雑魚とり習うかな、なじょにするもんだ」 て言うど。そうすっど、 「感じる晩げ見込んで、夜のええ晩げ、尻尾川さ入っでおいて、そして朝げまで入っでおけば、感じる晩げだら、誰でもとられるもんだから、そういう風にしてみろ」 て、教えらっだずも。そしてええ月夜だし、秋の月夜だから、霜降んべし、今夜はなんぼ冷(つみ)だいてええから、我慢してここに居(い)ねんね」 て思ってはぁ、尻尾突っこんで夜明けまでいだずも、そうしてこんど、夜明けたし、行くべと思って、尻尾引張っても、なんぼ引張ってもとれねぇし、なんぼ大きな雑魚食っついだんだか、女魚(めな)食っついだんだか、男魚(かな)食っついだんだかと思って、 女魚だか男魚だか エンヤラコンコン 女魚だか男魚だか エンヤラコンコン て、泣き泣き引張っても取れないずも。そうして取れねから、こんど、 千匹喰っついたか 万匹喰っついたか エンヤラ、コンコン て、こんどそういうたど。そんでもとれないうちにはぁ、近所の野郎ども見つけではぁ、「狐だ、狐だ」て、おさえらっだけど。そうして、こんどは唯いじめらっで、しばらく野郎どもに押えらっだから、そんなずるいことはするもんでないど。むかしとーびん。 |
〈話者 高橋しのぶ〉 |
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