20 南の山の馬鹿聟

 嫁の実家さ行って、団子食(か)せらっだど。あんまりうまいもんだから、家さ帰って作らせて食うべどて、その名前忘せねように、
「団子だ、団子だ」
 て、途中まできたげんど、堀コあったど。そこひょいんと跳ねる拍子にはぁ、
「どっこいしょ」
 ていうたど。こんで団子のこと忘せで、
「どっこいしょ、どっこいしょ」
 て、嫁待ってた家さ帰ったど。
「あがえな、うまいもの拵(こしゃ)うな知ってで、おれさ拵えて食(か)せねざぁ、あんまいちゃえ」
「なんだべ」
「どっこいだごで」
「どっこいなて知しゃね」
「知しゃねざぁ、あんまいちゃえ、ばか」
 て、嫁ば殴りつけたていうんだな。ほうしたれば、こがえ、団子みたいなコブ出たてだな。
「こりゃ団子みたいなコブ出来た」
「ああ、その団子だ、団子だ」ていうたど。
(藁科)
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