3 和尚と小僧むかしあったけど。あるとき、和尚さまと小僧がいだったど。そして和尚さまが、 「今日、夕方、持斎で行んから、お前、留守居してろよ、ここら辺には鬼婆出っから、誰がきたって決して戸開けんなよ」 て、教えらっじぇ、毎日もらってくる饅頭をたのしみにして、小僧が留守居しておったど。 その日に限って、和尚さん帰んねうちに暗くなったもんだから、戸閉まりしたれば、 「和尚さま、和尚さま」 て、きた者いだっけど。それから三枚のお札を、 「いつでも、こいつは鬼婆がきたときに持ってろ、決して戸開けんな」 ていわっだげんど、戸開けて入って来らっじゃもんだから、後、恐っかなくて、小僧は逃げだど。 まだまだ、なんぼ逃げでも鬼婆追っかけてくる。最後に、切なくなったときに、「大川でろ」て投げっど、水がすぐに大川になって出てきて、鬼婆流れんべと思ったら、そうしてるうちにまた鬼婆が追っかけてきた。 そんどき、また、 「糠山でろ」 て、投げっど、糠の山がでた。ほして糠山だから登れば、くっくっ、くっくって崩れる。そして鬼婆、一所懸命のぼろう、のぼろうとして登っているうちに、遂には鬼婆も糠山をのりこえて、また追っかけてきた。 その次は、「火の海が出ろ」て投げっど、ぼんぼん、ぼんぼんと燃えてしまって、その火さ飛び込まんねかった。そして小僧が逃げて行くと、小さい小屋があって、梁の上さいたら、その後で鬼婆がきて、一日、一所懸命追っかけたので、くたびれてしまって、焚火をした。梁の上から見っだら、鬼婆は、 「はて、腹減ったから、餅あぶって食うが」 といって、餅焼いた。だまって梁の上からじっと小僧待っていたところが、餅が丁度ええぐ焼けだ。鬼婆は居眠りしてしまった。そうすっじど、その小僧、上から青(お)芋(の)殻(がら)を抜きとって、そうして焼けた餅をチュクッと刺して、そして全部食べてしまった。鬼婆が目さましたところぁ、餅はすっかりなくなった。そうしてるうちに、 「はてはて、さっきだ焼いだな、火の神さま、お合(あ)いになったか」 て、鬼婆忘(わ)せだべ。そしてその次には、 「甘酒でも温めて呑むか」 て、甘酒温めたところが、また鬼婆眠むかけしたもんだから、また青芋殻とって、ずらずらて甘酒吸い上げた。 「はてはて、今日はもう何もなくなった。はて、何の唐戸さ入って寝ようか、石の唐戸(からと)ええか、木の唐戸ええか」 ていうたば、小僧は、 「木の唐戸ええ」 ていうた。 「はぁ、ほんじゃ、木の唐戸ええ」 て、入って寝たどころさ、小僧が落ちてきて、木の唐戸さ錠かけて、お湯わかして、キリキリて、キリで孔あけたら、鬼婆は、 「キリキリ虫がさえずるよ、明日も天気はよかろうべ」 というて、眠た。そのうちにその湯を孔から入っでやって、その鬼婆を殺して帰ったけど。 |
(袖山) |
>>さるむこ 目次へ |