2 狐のお産

 産婆してっど、狐は難産すっど、狐は人に化けて、頼まっで行ったど。ほうして行って、大したおぼこ産させて呉っで、大した大きい家だけって。戸の口に、こげな大きい石があるような家だっけ。そして御馳走になって、また送らっできた。重ね重箱のお分けなどもらってきたど。
 ほうしたどころが、大したええどこの御祝儀あって、狐に化かにさっで、みなとっかえさっだど。て、いうたれば、その産婆、
「ほんじゃ、おれ、ゆんべな、何だか考えでみっど、もやらくやらていうな気もしたな。狐のおぼこ産(な)しさせたであんめぇか」
 ていうたって。ほして重箱借っだもんだから、そいつ持って行ったげんども、家なのない。その家にこげな大きい石あったからと思って尋ねて行ったれば、ないなだど。狐は化けて、産婆たのんで行ったんだど。ほしたら、その人ぁ、産婆やめたど。
「おれ、狐のおぼこ産ししたから、産婆やめた」
 て。そしたれば、あるところの旦那衆の御祝儀して、狐に化かさっで、お分けみな取っかえさっだていうことだったど。
(我妻)
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