10 峠田の大蛇

 七ヶ宿の峠田のダキていうすばらしい山で、そこはゴロ山で大きな石がいっぱいあって、石と石の間から風穴みたいになっていで、冬は温かい空気、夏は涼しい空気が、風がほっから流っでくる。
 そこに、誰言うとなく、すばらしい大きい蛇が住んでいたど。ほの蛇はまず、働きに行った人に悪れごどする。掛ったり、()ったり、あるいは昼食なの一呑みに呑んだりしてしまう。
 んで、困っていだれば、あるキコリが山さ行ったらば、いきなり襲わっだ。逃げ場もなくて、ほしてマサカリで戦った。何とも疲っできて、蛇の方がつよくなってきた。人の方は受け太刀になってきたはぁ。ほして、ところどころから炎のような舌で、ペロペロていうど、息吹きかけられる。体がだんだぇだるくなってくる。こんではうまくないていうので、その人がこんどは、蛇の上の方さ登って行って、山の上から石転がした。ごろごろ、ごろごろ、大きい石転がして、ほの石が当って蛇が、がおったど。そしてほっちこっち石さぶっつかって、蛇が苦しみ始めたどこ、最後のとどめ刺した。ほして、ほこらここら探して、一族郎党全部殺してしまったはぁ。
 て、その蛇は長さ十間余、胴のまわりは三尺ていうから、さしわたし一尺ぐらいだったど。立てば二間にもなったど。
 そしたら、その家さだんだん病人などばり出て、不幸つづきで、ほして家族の人は死に絶えて行くもんだから、占師さ行ったらば、〈七代祟る〉ていう蛇の亡霊が出た。
「おれは悪れごどしたから、おれ殺されんな仕方ないげんども、孫子(まごこ)まで殺さんなねざぁどういうわけだ。んだからおれは祟るんだ」
 て、峠田では今ではそこの家の人は絶えていねぐなってしまったど。
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