4 一人静

 むかしむかし、きれいな娘いだったて。ほしたらその娘さ二人の男が惚れた。一人はすばらしい旦那衆の息子、一人は貧乏人の息子だったって。んだげんど、ほの貧乏人の息子の方は気は非常にやさしい。ほして男ぶりもええがった。旦那衆の息子はガマ蛙みたいで、めんくさいという、粗暴だし、まぁ好きでないがったげんど、やっぱり、持ってるもの持ってるしなもんだから、その辺何とも仕様なくて、そしてその二人のみにくい争いが続く。はいつ、()んだくなってはぁ、人里離れた山里さ行って、一人ばっかり暮していだ。
 ところが流行病(はやりやま)いに倒っではぁ、死んでしまったはぁ。ほしてほこさ一本の草が生えて、そして花咲いだ。誰いうとなくこの花のことを、〈一人静〉て名前つけた。今でも人里離っだ山にひっそりと〈一人静〉て、草花が咲いでいんなだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
>>おとぎり草 目次へ